みなさん陸マイラー生活はいかがお過ごしでしょうか。
今回は、航空関係者に聞くシリーズ第1弾として、大手航空会社のグランドスタッフをはじめ広い職種に従事した経験を持つ方にグランドスタッフの仕事の裏側について聞きました。
グランドスタッフの仕事とは
グランドスタッフは、空港のチェックインカウンターや搭乗ゲートなどでお客様の接客をする地上職員です。
グランドスタッフの主な業務は、チェックインカウンターでの航空券の発券や座席の指定、 荷物の預かりなどを行う搭乗手続きと航空機が時間通りに出発できるように、搭乗ゲートにて乗客の案内を行う搭乗案内などがあります。
機内でサービス提供をするCAと並んで、空港でのサービス提供を行うグランドスタッフは、みなさんにも馴染みのある航空関係者ではないでしょうか。
元グランドスタッフから見た修行僧
グランドスタッフは利用者を覚えてる?
空港で働くグランドスタッフは、空港のカウンターでの搭乗手続き業務や搭乗口改札業務、到着業務の場面で主にお客様と接する機会があります。
羽田空港や伊丹空港など基幹空港では、毎日多くの方が飛行機を利用されるため、お客様ひとりひとりの顔を覚えることは困難ですが、地方空港では、空港を頻繁に利用されるお客様の顔を覚えていることがあります。
地方空港では、その特徴として、基幹空港と比較すると利用者数が少ない分、お客様と接する時間を長く持つことができ、より丁寧な接客をすることができる環境があります。
そのため、お客様とのやり取りの中で印象に残ったことがあると、直ぐに覚えることができます。
グランドスタッフは修行僧が分かるって本当?
修行僧の特徴その1 - 身軽さ
まず、修行僧はリュック1つとか手提げバッグ一つなど身軽であることも特徴の一つです。
通常、旅行で飛行機を利用される方は、日程中の着替えなどで荷物が大きくなりがちです。
しかし、大きなバッグなどは預け荷物として預けなければならないので、次々にフライトを乗り継ぎ、時間との勝負でもある修行僧の方々は、身軽になりがちなように思います。
まあビジネスで利用される会社員の方も比較的身軽な方が多いですが、スーツを着ていたり、ビジネスバッグを持っていたりするため、修行僧の方々との見分けは付きやすいです。
このようにお客様の身の回りを拝見するだけでも、修行僧らしきお客様というのは目星がついてしまいます。
修行僧の特徴その2 - 職員との接し方
お客様との会話の中にも修行僧の方々にありがちな傾向というものがあります。
修行僧の方の中には、積極的にグランドスタッフに話しかけてくださる方もいらっしゃいます。
修行僧の方は、多くの修行(フライト)を経験していく中で、マイルをはじめ、フライト、空港の施設に関する知識を一般のお客様よりお持ちです。
さらには研究家が多いのか、航空業界で使用されている用語までも知識として持たれている方も多いように感じます。
そのため、特徴その1に当てはまるような方が専門用語を使って話をされると、修行僧の可能性が高まります。
グランドスタッフはお客様へのサービスが仕事なので、疑問や不明点のご質問や雑談なども大歓迎なのですが、時にマイルに関する難しい質問を受けることもあります。
しかし大抵の場合、マイルに関する知識については、修行僧の方々の方が詳しく、ご期待に沿えるような回答をすることができません。
グランドスタッフはマイルに関するプロフェッショナルではないので、申し訳ないのですが、本社のマイル担当者にお問い合わせいただけるようにお願いをします。
さらに、修行僧の方に限ったお話ではありませんが、時々、航空マニアのようなディープすぎる質問をされる方がいらっしゃいます。
例えば、
「今日の風向きは〇向きだから飛行機の出発経路はこのコースで、到着地の進入経路はこのコースでしょ?」
など、
グランドスタッフの業務範疇外のことを質問されてしまうと、グランドスタッフは発券や搭乗手続関係のプロフェッショナルではありますが、運航や管制のプロフェッショナルではないので戸惑ってしまいます。
こういったお客様は、 知識を自慢されたい方が多いので、下手に回答するのではなく、笑顔で相槌を打つことでご満足いただけるようにしています。
修行僧の特徴その3 - マイレージ記録・予約記録
1年も経験しているグランドスタッフであれば、対応が難しそうなお客様のマイレージ記録や予約記録を確認して、どのような方なのか調べる癖がついています。
そしてお客様の記録を見れば、すぐに修行僧の方というのは分かります。
修行僧の方は、予約の取得が非常に多く、ダブルブッキング(同日の同じような時間帯に2路線の予約を取得していたり、同一日の同一路線の前後便に予約を取得していること)が多く確認できたり、同日の乗り継ぎ予約が多かったりします。
グランドスタッフの裏側
地方空港では、限られた人数のスタッフで運営されていることがほとんどです。
マニアックな質問をされるような方は、フライト終了後のデブリーフィングの際に、バックオフィスで必ず話題となります。
このようなお客様は次回ご搭乗いただく際にも同じように色々とご質問いただく可能性が高いので、それに備えた準備が必要となるからです。
過去の搭乗記録を確認したり、先の予約状況を確認したりして、次回空港を利用する日にちをチェックしています。
また 次回はどのように接したらよいのか、係員のマイルの知識をどの程度向上させるのか全員で模索しながら共有し、次に同じ修行僧がカウンターに訪れたときでもご満足いただけるサービスが提供するため、スタッフ全員の心構えができるようにしています。
元グランドスタッフからみた上級会員
上級会員は、当社フライトを頻繁にご利用いただいているいわば常連のお客様であり、グランドスタッフの中でも重要なお客様です。
ですが、その上級会員にも3つのパターンがあることをグランドスタッフは知っています。
一つ目は、修行を通じて資格を取得された会員、
二つ目は、 会社員の方で会社の経費で飛行機をよく利用する会員、
三つ目は、本当のお金持ちである会員
です。
それぞれの会員の特徴もあり、会社の経費でよく利用する会社員は、荷物は取扱注意で、到着地で早く出してほしい、など何かと注文が多く、本当のお金持ちの方は、紳士で何も物を申しません。
上級会員になる方は、グランドスタッフによく見られているのです。
既に上級会員の方、これから上級会員を目指す方は、空港での立ち居振舞いにも注意した方がいいかもしれません。
運航トラブル発生時の裏側
トラブルは日常的に発生
飛行機は、天候や機材整備による遅延や欠航がつきものです。
航空会社としては可能な限り目的地へ輸送する努力をしていますが、雪で滑走路が閉鎖、台風で離着陸ができない、またはエンジンが故障するなどトラブルは日常的にどこかの空港で必ずと言っていいほど起こっています。
トラブル発生時のグランドスタッフの仕事
遅延または欠航で困るのは当然お客様です。
グランドスタッフは、振替手段やホテルの手配など、お客様の旅程や要望に合わせて対応しますが、並行してクレームも多く受けます。
遅延や欠航した便に搭乗予定の全員の方が直近の同じ便に振替が可能であればいいのですが、そうなるとは限りません。
むしろほとんどの遅延や欠航での振替先はバラバラです。
誰を優先して振替を実施するのか、
どのように決定するのか、
目の前にはお客様が待っているのにいつも焦りが先行するばかりで、一人一人の対応にいつも以上に時間がかかる中、修行僧の方はご自身で飛行機の振替予約を行ったり、宿泊先を確保したりするため、グランドスタッフの手がかからないことは非常に有難いことです。
ちなみに、グランドスタッフの裏側では、上級会員の方のケアが必ず必要であることは常に頭にあるため、最先便への振替先を準備しています。
上級会員の方を対応する場合は、一般の方とは分けて振替対応などを優先的に行います。
当然ながら乗り継ぎ便も最先便を確保します。
また稀な対応ですが、天候不良などで全国的にフライトが乱れている場合は、振替をした乗り継ぎ便に間に合わない可能性もあるため、ダブルブッキングで最先便の次便にも予約を入れることがあります。
最後に
グランドスタッフから見た修行僧の方は、「航空に関する物知り」という印象を持つことが常であります。
質問はグランドスタッフの勉強になる反面、次回対面したときのことを想定すると、内容によっては構えてしまうため、どの路線に多く搭乗しているのか、月間の利用回数、また、次回の空港利用予定日など搭乗記録や予約記録は常に調べており、スタッフ内で情報共有されています。
このことは、修行僧の方と良好な関係を築けるチャンスと捉えている部分もあり、実際に空港のカウンターに訪れた際には、お互いが気軽に会話を交わしていることもあるのです。
修行僧の方は良好な関係が築ければ逆に言うと、グランドスタッフによる裏側の恩恵が受けられるかも知れません。